大川端だより(468)


同じくイーストウッド監督の「チェンジリング」という映画も傑作です。主演は、あのアクション映画で名を上げたアンジェリーナ・ジョリー。子どもをさらわれて取り替えられ、帰ってきた子どもが実子でないことを警察に訴えると、気が変になったことにされて精神病院へ入れられるシングルマザー役を演じています。


この映画は1920年代後半から30年代にかけて実際にあった事件を下敷きにしたもので、当時のロサンジェルス市警の堕落ぶりが克明に描かれています。また、当時から子どもを誘拐して虐待・大量殺人というやりきれない事件があったことをはじめて知りました。イーストウッド監督もこの事件のことは知らなかったようです。


この作品は、米国の警察の恥部をあからさまに描いているせいか、アメリカではあまり評判がよくなかったようです。しかし、ヨーロッパでは絶賛されたということです。


母親役のアンジェリーナが最後のほうで、捕まった犯人に会いに行き、「Go to hell!」と罵倒するシーンなんか、おそらく彼女がアクション映画で銃をぶっぱなす場面よりかっこいいと思います。


こういう社会派の作品を撮らしても、イーストウッド監督は娯楽性というか、映画の持つ“官能性”を充分見せてくれますね。