大川端だより(473)


久しぶりに週刊誌を買いました。一時はよく「ポスト」や「現代」を買っていたのですが、最近はほとんど買わなくなっていました。値段も高くなったし、内容もそれほど面白いと思わなくなっていたからだと思います。


ところが先日、あることで待ち時間が1時間ほどあって、読むものを何も持っていなかったので、コンビニに寄り週刊現代(11月27日号 特別定価400円)を購入。これがなかなか面白かったのです。


いちばん興味深かったのは、大手マスコミ(新聞の全国紙とテレビ)には見られない視点や情報が提供されていることでした。「前年比14万分増 お陰様で大躍進!謝恩第サービス号」と銘打つだけあって、とても濃い内容でした。


因みに、(社)日本雑誌協会によると、同誌の発行部数は717,756部で、総合週刊誌としては週刊文春の805,052部、週刊新潮の761,472部に次いで第3位です。印刷証明付部数ということなので、“公称”ではなく実数なのでしょう。多いと言えば多いし、読売新聞の1,000万部に比べると、10分の1以下ですから“少ない”とも考えられます。ですから、週刊誌が大新聞やテレビとは異なる視点や情報を市民に提供することはとても重要で、それがないと存在価値がありません。


で、今回買った週刊現代ですが、全200頁ほどの中に雑多な記事とグラビア写真(“袋とじ”まで)が詰め込まれています。大特集は「日本のこれから」で、世界は日本をどう見ているのか、日本経済がこれからどう変わっていくのか、という編集意図が明快です。


世上流布されている自動車や家電など組み立て完成品産業を中心にした“日本経済完敗”論とは異なり、一見華々しさはありませんが、製造業の根幹である「部品・素材・装置」産業では日本が圧倒的な優位を占めていることが説得的に説かれています。そしてこの文脈で、10年後20年後に日本の中心企業になっている会社を取り上げています。


また現在、大手マスコミでは民主党と菅政権バッシングが繰り広げられていますが、同誌では、「民主党政権『終りの予感』に答える」という形で、同党重鎮の渡部恒三藤井裕久両氏の対談インタビューを載せています。両氏はいわゆる“反小沢”なのでしょうが、仙谷官房長官にはトップ(総理大臣)を狙うような野心が全くないことや、次世代を担うのが野田、玄葉、岡田氏などであることが語られています。


これら大上段に振りかぶった特集も面白かったのですが、「決定!日本のいい俳優〈男優篇〉ベスト20」や「読むとラクになる有名人の『死に方』」、「日本の理系は凄い! 世界に誇る日本の天才たち」などの記事もとても興味深いものでした。


ほかにも、日本財団の創設者のことをノンフィクション作家、工藤美代子が書いた『悪名の棺 笹川良一伝』を下敷きに、いかにも週刊誌らしく「艶福家の私生活」とのタイトルで記事を作っています。


しかし、笹川氏が「世界中のハンセン病患者の施設を慰問し、患者の手を握り励ました」こととか、世間的には「政界の黒幕」や「金がすべて」という価値観の人というイメージが強いようですが、工藤氏の次のようなコメントを載せているのはとても印象的でした。


「今なら名誉棄損ですぐ訴えられるような記事を新聞や雑誌に書かれても、笹川氏は『書いている人にも女房や子供がいて、生活があるんだから』と一切提訴をしなかった。だから、いい加減な情報が野放しになったと思います」。


このコメントを読んで、ぼくはすぐ『悪名の棺 笹川良一伝』を購入し読み始めましたが、佐野慎一さんのノンフィクション『甘粕正彦 乱心の曠野』と同じく、悪名高かった人物の汚名をそそぎ、歴史を塗り替えるようなインパクトがありますね。