大川端だより(386)


たまたま梅田の書店で見つけた集英社新書『ルポ 米国発ブログ革命』(池尾伸一著)は6月22日に発行されたばかりの本だが、ヒジョ〜に示唆に富んだ内容である。アメリカのブログ事情というか、ブログがジャーナリズムの一角を担い、今回の大統領選でも並々ならぬ影響力を持った現実が新聞記者の目を通して描かれている。「ルポ」と銘打っている通り、何人もの影響力のあるアメリカのブロガーに会って直接話を聴いているので、向こうの事情がよくわかって大変興味深い。


とくに示唆に富んでいるのが「ネットワークト・ジャーナリズム」というコンセプトである。これはジャーナリズムの将来あるべき姿として提唱されているもので、本書によると、下記のようなものである。


「それは、情報発信する一般の人と、報道機関で働くプロのジャーナリスト。あるいは、情報発信する一般の人同士。あるいは、ある報道機関で働くジャーナリストと別の報道機関で働くジャーナリスト。あるいは、フリーランスのジャーナリストと、報道機関で働くジャーナリスト……。とにかくプロもアマチュアも報道機関で働く者も、お互いの『枠』を超えて、情報発信する者同士として協力し合い、真実を見つけていくという概念である。/特にカギを握るのは、インターネットや携帯電話、デジタルカメラ、ビデオなどの情報機器によって情報発信手段を獲得した一般の人々と、マスメディアの連携である。」


例えば、ぼくが編集に関わっている市民活動総合情報誌「Volo(ウォロ)」では、編集委員の中にプロの新聞記者やフリーライターもいるが、まだまだ調査報道のようなことはやれていない。個々の編集委員が取材をして記事を書く、というスタイルで、しかも紙ベースの雑誌という形式だから、ブログやホームページはあるものの、“ネットワークト・ジャーナリズム”と言えるところまでは到達していないのだ。しかしやっぱり、これからのメディアはこの方向性しかないだろうと思う。


「ウォロ」や「市民ライター通信」の編集委員にはぜひ読んで欲しい新書である。とても示唆に富んでいます。