大川端だより(350)


去る1月25日、ボリビア国民投票で新憲法を採択した。その概要は、「開発と権利のための行動センター」のブログの次のURLに詳しい。http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2009/02/post-ca8e.html


同ブログからぼくが注目する項目を抜粋すると、下記のとおり。


●倫理―モラル 「良き生き方」(第八条)
「良き生き方」というものが、憲法の中でたびたび使われている。これはアンデス地域の先住民族運動が取り上げてきた理念であり、エクアドル憲法においても重要な要素となっている。よりよい生活という、個人主義的な発展性を目指すのではなく、調和のとれた共存を意味するものと理解される。
「国家は多元的社会における倫理−モラルの原則として次の原則を取りあげ、促進する。ama qhilla, ama llulla, ama suwa (怠けず、嘘をつかず、泥棒をしない)、 suma qamana (よく生きる)、nandereko (調和的な生活)、 teko kavi (よい生活)、 ivi maraei (悪いもののない土地)、 qhapaj nan (高貴なる道)」

 
●国家の役割の拡大
 基本的な権利を保障するための国家の役割と自然資源(地下資源)の利用における国家の役割が拡大。
国家の目的と機能(第九条)
・公正で調和のある社会の構築。多民族のアイデンティティーを確立するため、社会正義の全的な確立に基づく、脱植民地化、非差別、非搾取。
・福祉・開発・安全・全ての人や民族の平等な尊厳の擁護
・全ての人の教育・健康・仕事へのアクセスを保障すること
・自然資源の責任ある利用の促進及びその工業化の促進
 

●平和国家(第十条)
 軍隊及び軍役を保持し(第二四三、二四九条)、また自衛のための武力行使を留保しつつ、平和国家であることを宣言。また外国軍の基地も認めない。
ボリビアは平和主義の国家であり、平和の文化と平和への権利を促進する」、「紛争や対立を解決するための方策としての武力による攻撃を拒否する」


●多様な民主主義の適用(第一一条)
 直接・参加型、代議制、コミュニティ、三つの民主主義のあり方を明記。


先住民族の権利(第三〇条)
自決権を明記する一方、協議に基づく「同意」には触れられていない。また自然資源(この場合には地下資源)の開発にかかわるコントロールも明記されておらず、生み出された利益を享受することにとどまっている。
・文化的アイデンティティーへの権利
・自決とテリトリーへの権利
・それぞれの制度が、国家の一般的な構造の一部をなす権利
・集団的な土地登記の権利
・聖地への権利
・独自の通信手段の生成と管理の権利
・その知識に対する集団的な知的所有権への権利
・関係する法的、行政的施策を前に協議を受ける権利
・そのテリトリーにおける自然資源の開発による利益を受ける権利
・再生可能な自然資源の、排他的利用の権利


●詳細に規定される地方自治
 第三部「国家の領域的な構造と組織」においては、地方自治のあり方について詳細に定めている。(第二六九条から三〇五条)
 ここではボリビアは「デパルタメント(県)」、「プロビンシア(郡)」、「ムニシピオ」、「先住民族・農民テリトリー」によって領域的に編成されているとされており、更に「デパルタメント」、「ムニシピオ」、「先住民族・農民テリトリー」、及び複数のムニシピオあるいはプロビンシアの連合体によって構成される「地域」における自治が認められている。更にこうした領域的な自治体は、憲法上同じレベルにあるものとされ、相互に従属するものではないとされている。
 特に「先住民族・農民自治」においては、「先住民族の自決権の行使としての自治」が謳われており、先住民族・農民自治体がこれまでの最小行政単位であった「ムニシピオ」と併存することが想定されている。
 またこの部においては、国家及びそれぞれの自治体の権限が列記されているが、金融、通貨政策、外交などに加えて、土地政策、炭化水素、また鉱物資源、水資源、水源などが国家の権限下に置かれることが明記されている。


●再分配と均衡ある開発
 第四部の「国家の経済的な構造と組織」においては、ボリビアの経済モデルは「多元的であり、生活の質の改善と、全てのボリビア人がよく生きるためのものである」とされている。(第三〇六条)
・経済的な余剰を、社会政策を通じて公正に再分配することを通じて開発を保障する。(同右)
・国家の経済的主権を脅かすような私的な富の
集積を認めない。(第三一二条)
・全ての経済組織は尊厳のある仕事を生み出し、また不平等の削減と貧困の撲滅に貢献する義務がある。(第三一二条)


●経済活動における国家の積極的関与
 多元的な経済とは「共同体的、国家、民間、社会・協同組合といった経済組織によって構成される」ものとされ、国家が経済的なアクターとして位置づけられている。国家の役割としては、自然資源(地下資源を含む)の管理及び工業化、上下水道の管理他、直接的な財やサービスの生産などが規定されている。(第三〇九条)