大川端だより(263)


玉の如き小春日和を授かりし


松本たかしの有名な句。ウィキペディアによると、「小春日和(こはるびより)とは、晩秋から初冬にかけて、移動性高気圧に覆われたときなどの、穏やかで暖かい天候のことである。小春(こはる)とは陰暦10月のこと。現在の太陽暦では11月頃に相当し、この頃の陽気が春に似ているため、こう呼ばれるようになった。よって、俳句においては「小春日和」・「小春」は冬の季語となる。(陰暦の冬は10月〜12月)なお、英語ではIndian Summerという」とある。


こういう俳句を目にすると、俳人は「巧いこと言うなあ」とつくづく感心する。まず、「玉の如き」がいい。「玉」というのは「丸い形をした美しい宝石」のこと。そこから転じて、「美しいもの、優れたもの、価値あるもの、愛しむべきもの」といった意味になる。この俳句の勘所は、小春日和を「玉」に喩えたことと、下五を「授かりし」で締めくくったことだろう。「授かる」は「神仏や上位の人から大切なものを与えられる」という意味だから、「本当に有難いことだ」という感じが出る。単なる一日の気象を「授かる」という動詞で受け止める感性は、忙しい現代人にはなかなか見られないものだろう。