大川端だより(472)


1000冊の蔵書がたった1万円!



11月17日の午後5時に、買取りの古書店さんがやって来られました。店主と思しき白髪の60代男性と、50代ぐらいの女性でした。店主らしき方がざっとぼくらの蔵書を見て、「専門書や学問的な全集などでないと、一般教養書は最近、値も付かないし売れないんです。(安くて)びっくりされるかもしれませんが、今ここで見積もりさせてもらって、それでお嫌ならすぐ退散します」と宣言。


そして、「申し訳ないですけど1万円なら出せます」と。で、ぼくは「古書買取の相場というのはどこでも同じようなものなんですか」と訊きました。すると、「そうですね。いまはとにかく古書(新刊含む)が売れないので、大体そんなもんですよ」とのこと。


ぼくは以前、同じく1千冊ぐらいを古書安売りチェーン店「ブックオフ」(「ブックワン」とか他店だったかも…」)で売って、5千円程度だったので、まあその倍か……と思って、売ることにしました。すると、すぐに撤収作業が始まり、女性スタッフが次々と何冊かずつ紐を掛けて荷造りし、店主が車に運ぶという手順で、30分強でアッという間に完了。プロの仕事ぶりに圧倒されました。ぼくらは2,3人がかりで三日ほど取捨選択に費やしたというのに(笑)。


ところで、店主はバイヤーズ・トークとして、最近ネット書店の台頭で古書店で本が売れないことを強調していましたが、そのご本人が現実のお店ではなく、インターネットでの古書販売を中心にしておられるようです。その点を考えると、「古書買取→ネット販売」というビジネスモデルは、組織とシステムの構築や人件費を差し引いても、けっこう成り立つ商売ではないかと思いました。


だって、商品仕入れが古書1,000冊1万円ということは1冊10円ですよ。ぼくの場合は、かなり高く買った新刊本もありましたし、古書でも値の張るものもありましたので、少なく見積もっても1冊500円から1,000円は出しています。そうすると、まあ、50万や100万は売却蔵書に費やしたということです。


おそらくネットで販売する際には、ざっと1冊300円〜1,000円の根付けがされるとして、30万円から100万円の見込み収入があるわけです。もちろん、全部売れることは考えられないでしょうが、ネットのロングテールなら、短期での廃棄処分の心配をしなくていいので、現実の書店で在庫に困るというようなことはありません。


もちろんさっきも書いたように、楽天やアマゾンに払う金額や人件費を含めた諸経費の問題もありますが、安い商品を大量に仕入れて、ネットのロングテールで売るという商売は、なかなか頭のいいビジネスモデルだと言えるのではないでしょうか。業界人からは「何を甘いことを」という声が聞こえてきそうですがね(笑)。