大川端だより(465)


内田樹さんの『街場のメディア論』は、広報や編集に携わる者にとって必読書である。神戸女学院大学で2年生対象に行われた「メディアと知」と題する入門講座が基になっている。


二十歳ぐらいの女子大生が相手だから、とても分かりやすい語り口なのだが、内容的にはかなり高度なもので、ぼくらのような還暦を過ぎたおっさんでも、またベテランの広報マンや編集者にとっても実に示唆に富む内容である。


かなり無理を承知でまとめると、「市場モデルではうまく機能しないものもある」ということで、それには教育やジャーナリズム、出版文化(書物)などがある。


とくに示唆に富むのは、最初の仕事論や、正義論、読書論である。中でも、ぼくがいちばん面白いと思ったのは、著作権の問題である。内田氏は、ウェブに発信したものは完全に著作権フリーにしており、いかように引用や変形してもOKだそうだ。著者の同意も必要ないという。


また、著作権をほとんど考慮外に置いているように見える中国などの模倣文化と、アメリカのように著者(作者)を蔑にして、著作権を売買するような文化は一見違うように見えてどちらもマーケット・モデルで根は同じだ、という議論にはまったく賛意を表したいと思う。