大川端だより(432)


ぼくには今、多くのNPO・市民活動団体が、営利企業に範を求めようとしているように見える。その理由はおそらく、自分たち(第三セクター)には足りないと思っている、管理や制度(マネジメント)、システム、統制・統治、法令順守、教育などが、営利目的の第二セクターにおいては確立されている、というように見えているからだと考えられる。


だからこそ、「ボランティア・マネジメントの重要性」とか「内部統制の必要性」、「会計基準の確立」、「個人情報流出防止策」といった“管理オリエンテッド”な言葉がしばしば口の端に上ることになるのだろう。それらの重要性・必要性について完全に無視するべきだとは思わないが、しかし…、


「ボランティアの人たちと働くことは、伝統的な意味でのマネジメントとは全く異なる。私は何かをしろと誰かに言うことはできない。私にできるのは、励まし、動機づけ、ガイドすることだけ。マネジメントなんか必要ないとも言える。ボランティアたちは実に頭が良く、モチベーションが高く、自分自身をマネジメントできる人たちだから。」


…というジミー・ウェールズ(ウェブ百科事典「ウィキペディア創始者)の言葉や、「トップレベルのチームはマネジメント重視ではなく行動重視でなければ駄目だ。」とか「組織は最初から贅肉なしだ。ライン(筋肉)とスタッフ(頭脳)を分けてはいけない。多くの大きな『デブ』会社のように、その二つを分けてはいけないんだ。」というゴードン・ベル(初期コンピュータ産業の育成者の一人)の言葉を心に留めておく必要がある。


また、グーグルの創業者の一人、エリック・シュミットの「シリコンバレーの物語は昔から変わらない。小さなチームが、限られた資源で、驚くようなことをなしとげるんだ。(後略)」とか、サン・マイクロシステムズの創業者の一人、ビル・ジョイの「世界を変えるものも、常に小さく始まる。理想のプロジェクトチームは、会議もせず、ランチを取るだけで進んでいく。チームの人数は、ランチテーブルを囲めるだけに限るべきだ。」といった行動スタイルについての言葉。


そして、「私たちは、グーグルを『世界をより良い場所にするための機関』にしたいと切望している。」という同社創業者の一人、ラリー・ページの言葉が示している、営利企業というよりはNPOや市民活動に近い志向性、ミッション性の重視に注目する必要がある。


これらの言葉は、『ウェブ時代 5つの定理』(梅田望夫著 文春文庫 本体581円+税)から引用したものである。……ぼくが何を言いたいのかというと、NPO・市民活動がいま範を求めるべきは、古い体質の大企業による管理志向(思考・嗜好・至高…?)ではなく、いま正に世界を変えつつあるグーグルをトップランナーとする、新しいネット企業群の思考と行動のスタイルなのではないか……ということである。