大川端だより(421)


きのう高校時代の友人・古川くんのことを思い出したので、きょうも一人。森田くんといって、エエとこのボンであった。高校の近くのお屋敷に住んでいた。何回か行ったことがあって、門構えの立派な家だったように記憶しているが、何よりも素晴らしかったのは、ハンク・ウイリアムズをはじめとするカントリー&ウエスタンのLPの名盤が揃っていたことだ。確かお兄さんがC&Wが大好きで、学生バンドでフィドルバンジョーを弾いておられたのではなかったか…。


じつはぼくの洋楽体験は、プレスリーのロカビリーなんかよりハンク・ウイリアムズのC&Wが先だったような気がする。日本のC&ウエスタンと言えばもちろん小坂一也で、彼は本当にハンクそっくりの歌い方をしていた。あの鼻にかけた裏声のような歌い方に憧れ、よく真似をしたものだ。いかにも「アメリカン!」という感じのC&Wは、ぼくには米国の草の根的な豊かさの象徴のように聞こえた。


だけど、後に実際にアメリカに行って、当時の反体制的な若者に「C&Wが大好きだ」と言うと、「Realy!(え〜っ本当なん!)」と馬鹿にされた。まあ、日本で言えば、反体制の学生が、三波春夫のド演歌が好きだ、と言うようなものだったのだろう。


僕が高校を卒業したのは65年の3月だから、ベ平連やボラ協がスタートした年で、レイト・シックスティーズの無秩序が始まる入口の年だったのだ。今でもC&Sの愛好家はある程度の数がいて、3人ハンク(H・ウイリアムズ、H・トンプソン、H・スノウ)などの歌を聴いたり、コピーして歌ったりしているのだろう。ぼくのその後の音楽遍歴は、ブルーグラスなどの要素もあるが、社会性のあるボブ・ディランへとシフトしていった。