大川端だより(410)


12月に入って初めての更新がクリスマス・イブの日になってしまいました。
皆様いかがお過ごしですか? 私はいたって元気にしており、M−1などを
みて楽しんでおります。本日発行した市民プロデューサー通信167号に、
下記の記事を書きました。



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┃┃■ 黒ビールでも飲みながら……(144) by thayama
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「マラライ・ジョヤさんを知っていますか?」


▼マラライ・ジョヤというアフガニスタンの女性活動家の名前を知っている日
本人が何人ぐらいいるのだろう。実はぼく自身、写真月刊誌「DAYS JAPAN」の
2010年1月号、ノーム・チョムスキーの特別連載第10回「戦争と平和オバマ
ノーベル賞」を読んで初めて知ったばかりである。この記事の中でチョムス
キーは、ノーベル平和賞受賞者としてオバマよりふさわしいのはマラライ・ジ
ョヤだと書いている。


▼マラライ・ジョヤ防衛委員会(http://www.malalaijoya.com/index1024.htm
のサイトや、「机の上の空 大沼安史の個人新聞」というブログの2009年12月
12日の記事(http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/1/index.html)などに
よると、彼女はアフガン支配層の抑圧と女性差別に対して敢然と立ち向かう傑
出した闘士である。


▼2003年12月、アフガンの新憲法を制定するために選出された代議員が集まっ
て、カブールでロヤ・ジルガ国民大会議)が開かれたとき、ファラ州の難民
キャンプからやって来た24歳の女性代議員マラライが発言を求めた。議長は3
分間の制限付で発言を許可。その際の、彼女の勇気ある発言は下記のようなも
のだった。


▼「私はこの議場にいる同胞を批判したいと思います。この国の惨状に責任の
ある犯罪者たちを、この国の惨状に責任のある軍閥たちを、あなた方はどうし
て、このロヤ・ジルカに出席させているのですか? アフガニスタンは国内、
及び国際的な紛争の中心地になっています。彼らは女性を弾圧し、この国をガ
タガタにして来ました。裁判にかけられるべきです。アフガンの人々は彼らを
許すかも知れませんが、歴史は彼らを許さないでしょう」。


▼マラライのこの発言は、歴史に残る「3分間スピーチ」として有名になり、
ユー・チューブ(http://www.youtube.com/watch?v=iLC1KBrwbck)で見ること
ができる。長老然とした議長が、「彼女をこの議会から放逐する。つまみだせ。
彼女はここにはふさわしくない」と大声で叫んでいる。それから6年間、マラ
ライは、米国の傀儡である現政権の腐敗を告発し、アフガン戦争の停止を訴え
続けて来ており、これまでに5回も暗殺の危機に瀕したが、今なお発言を止め
てはいない。彼女こそアフガニスタンで最も勇気ある人物である。


▼アフガンの現カルザイ政権や上層部の腐敗は酷いもので、オバマ大統領がい
くら兵員を増派しても、同国の惨状が解決への道を歩み始めるとは思えない。
彼がノーベル平和賞授賞式で行ったスピーチにおける「正義の戦争がありうる」
との発言は噴飯モノで、マラライはアメリカの非営利独立系ニュース番組「デ
モクラシー・ナウ!(Democracy Now!)」の取材(09年10月28日)に応じ、次の
ように語っている。(※下記URLで映像とテキストを見ることができます。
http://www.democracynow.org/2009/10/28/a_woman_among_warlords
_afghan_democracy)


▼「増派される兵士たちは、米国政府の間違った政策による犠牲者です。アメ
リカは、戦争という間違った理由のために、兵士たちを送り込むのです。彼ら
は、アフガン戦争は良い戦争だけど、イラク戦争は悪い戦争だったと言うけれ
ど、戦争は戦争です。民主主義も、女性の権利も、人権も、戦争によっては実
現不可能です。そして、残念ながら、私たちアフガン人に対するオバマ大統領
の政策およびメッセージは、ブッシュ政権時代のそれとほとんど変わりません。
オバマはアフガンにさらなる対立と紛争をもたらす増派をしたいのです」。
そしてまた、インタビューの最初のほうで次のようにも語っている。


▼「この8年間で、2千人以下のタリバンが殺害されたのに対して、8千人以
上の一般市民が殺戮されました。だから日々、私たちは、この戦争が対テロリ
ストのものではなく、罪のない民間人を相手にしているものだと思わざるを得
ないのです」。


オバマ大統領がいくら「アフガン戦争は正義の戦争だ」と強弁しても、現実
の惨状がそれを裏切っている。米軍は非常に残虐な兵器である白リン弾やクラ
スター爆弾を使用して、多数の女性や子どもたちを含めたアフガンの無辜の民
を殺戮したのである。


▼日本の主要大手マスコミによって、マラライ・ジョヤの勇気ある行動や米軍
による残虐な戦争犯罪が大きく報道されたことを、ぼくはこれまで寡聞にして
知らない。これらの事実は、インターネット上の市民(個人)発のブログやホ
ームページが無かったら、知り得なかった情報である。テレビと新聞を主流派
とする日本のマスメディアは、このことに対する危機意識がほとんど無いよう
に見えるが、もし本当にそうだとするなら、ここ2〜3年のうちにこれらの旧
来メディアは衰退の坂道を転げ落ちていくことになるだろう。