大川端だより(380)


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■【1】 論・RON・ロン ☆彡
□       ◆  憲法9条とコスタリカ  ◆      
■                           ★彡☆★
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                               thayama


憲法9条の非戦主義と自衛隊の存在が矛盾していることは小学生にも分かる道
理だが、矛盾解消の方法が二つあることもまた自明である。自衛隊の存在を認
めて9条を変えるか、9条どおり自衛隊を解散するかである。


現在の日本の支配体制は前者の論理で種々画策しているように見える。自衛隊
による、インド洋での給油活動やソマリア沖での海賊からの船舶護衛活動など
によって、国内と国外の自衛隊容認世論を形成していこうとしているようだ。 


しかし、「9条守るべし!」との国内世論はまだまだ強いうえ、国際的にも日
本の正式な再軍備を積極的に歓迎する国はほとんどないだろう。かつて日本軍
に支配されていたアジア諸国はもちろん、ロシアを含めた欧州諸国や大洋州
中南米、アフリカ、そして北米のカナダなど、どの地域や国にとっても日本の
軍事大国化は望ましくないはずだ。唯一の例外はアメリカ合州国で、かつての
ような軍事大国化は論外にしても、ある程度の日本の軍備の充実を望んでいる
にちがいない。


アメリカは、自国の経済的、軍事的弱体化という現実の前で、これまでのよう
に地球規模で軍隊を展開する力を失くしつつあり、多極化(覇権の分散化)を
容認せざるを得なくなっている。そのため、近い将来、可能ならば日本や韓国
からも米軍を撤退させることを考えるだろう。そのとき、日本にある程度強力
な軍事力がないと、経済的にも軍事的にも強大化する中国とのバランスが取れ
ないので、憲法9条の改定と日本の軍備の拡充を望むにちがいない。


このような状況の中で、日本の多くの市民は徐々に現実の国際情勢に流されて、
日本政府が画策する自衛隊の国軍化の波に飲み込まれようとしている。今はま
だまだ“9条死守派”もかなりの勢力を保っているが、実際に戦争の恐ろしさ
を体験している世代が少なくなってくると、現実追認派が増加してくるのは目
に見えている。


ところが問題は、9条死守・自衛隊解体について、誰も実際の具体的なプロセ
ス(工程表)を明示していないことである。また、日本の完全非武装化が、世
界中の誰もが望む“恒久平和”に近づくための最良策であるということを理論
的に説明できていないことである。二十数万人いる自衛隊員をどのように武装
解除し、戦闘機や軍艦をどう処分するのか。万が一、どこかの国から侵略され
たら、どのように抵抗し、敵を排除するのか。これらのことをきちんと考え、
誰もが納得できるような解答を用意しないと、いくら9条死守を叫んだところ
で詮無いことである。


そこで、とても参考になるのが、実際に軍隊をなくした中米コスタリカの経験
である。『丸腰国家〜軍隊を放棄したコスタリカ60年の平和戦略〜』(足立
力也著 扶桑社新書)を読むと、面積が北海道の6割程度で、人口がわずか4
20万人、という小国のものすごく現実的な平和戦略が理解できる。要は、同
国にとっては、軍隊を持つより、非武装のほうが相対的に安全である、という
現実主義と、積極的で地道な平和外交戦略によって“丸腰国家”を実現してい
るのである。日本によくある理想論的平和主義ではなく、ものすごくリアリス
ティックな非軍事主義である。


アメリカにオバマ政権が誕生して、核軍縮を言い出している現在、被爆国日本
は軍事増強ではなく、軍事費削減と、最終的な非武装化を目指す方向性につい
て真剣に再検討してよいのではないかと思う。国の規模や置かれている状況は
違うが、実際に非武装化を成し遂げたコスタリカの経験に学ぶべきことは多い。