大川端だより(342)


テレビで米国バラク・オバマ新大統領の就任式を見た。全国から200万人が集結したというワシントンの町は人人人で溢れかえっていた。なんか信じられない光景である。大統領という権力者の就任を祝ってこれだけの人が集まるのがアメリカという国なのである。ちょっと恐ろしく感じた。


アメリカは本当に英雄主義の国だと思う。映画界でも、スポーツ界でも、人々はいつも英雄を待望し、つくり出していく。英雄が一人で世の中を変えるなんてことがあるはずがないのに、結局その英雄に対する期待値が社会を動かしていく。オバマは自分でも言っていたように、自分ひとりで世界を変えるのは難しいが、ふつうの市民が力を合わせれば変えられる、と本気で思っているのだろう。


テレビ各局でアメリカ特集のようなことをやっていたなかで、どこの局かは覚えていないが、アメリカの自動車産業について取材報道していた。いまアメリカの自動車産業は一斉に燃料電池による電気自動車の開発に乗り出したということだが、それを見ていて思ったのは、日本の燃料電池の技術は世界一だからまだまだアメリカは追いつけないだろう、という日本の経済評論家の見通しの甘さである。


関西ローカルの夕方のニュースワイドで、Iという経済評論家が、関西にはシャープやサンヨー、派pなソニック、京セラなど、クリーンエネルギー技術に長けた企業が多いので、ひょっとするとこれからは関西経済が中核になって行くかもしれない、というようなことを言っていた。


しかし、アメリカの自動車産業は国の金を入れて合同で燃料電池の開発に着手したようだし、何よりもすごいと思ったのは、電気自動車をアメリカ社会に定着させるために、システムとして企画していることだ。現段階では余りにも充電に時間がかかり、20時間とか充電して50キロ程度しか走れないから使い物にならない、ということだが、彼らは電気充電スタンドをあちこちにつくり、燃料電池自体をサッと交換できるようなシステムを考えているのである。日本がまだまだ実用段階ではない、と言っている間に、彼らはとにかく電気自動車利用の社会システムを作り上げようとしている。


アメリカが怖いのは、一人の大統領によって社会に「気」が充填されると、みんな一斉にある方向へ向かって動き出すことである。オバマグリーンニューディール政策は、地球環境にそっぽを向いていたアメリカをクリーンエネルギーの方向へ一気に導いていくかもしれない。日本の経済界には脅威かもしれないが、世界にとってはそれはそれで結構なことではある。