大川端だより(335)


ボブ・マーレーの「Jammin'」を聴きながら今これを書いている。『強欲資本主義 ウォール街の自爆』のなかに印象的な言葉を発見。


「処方箋は『縮小』以外ない。総てはそこからやり直しだ」


本当にその通りだと思う。市場も、人口も、金融も、生産も、消費も大きくなりすぎた。この本はタイトルがえげつないだけに敬遠する人も多いと思うが、第七章の「バブル崩壊に立ち向かう」なんか実にいいことが書いてある。


池田内閣時代に「所得倍増計画」を構想した下村治博士は、オイルショックのときにすでに、高成長が可能な時代が終わったことを悟り、「ゼロ成長論者」となり、次のように指摘した。


(1)消費狂いになってしまったアメリカ人と、レーガンの大減税は、虚構に虚構を重ねる経済政策である。


(2)日本商品はアメリカの異常膨張に吸い込まれ、繁栄しているかのように見えるが、この異常膨張した経済に合わせて設備投資すると、これからは過剰設備がやがて深刻な問題(重荷)となる。


(3)財政赤字を減らすには、大幅な歳出削減と増税以外に道はない。しかしアメリカは本気で財政収支均衡法をやる気がない。


(4)アメリカの要求に合わせた日本の内需拡大論は、日本経済を破滅させる。


(5)ドル崩壊の危険性は常にあり、もう日本は何兆円も損をしている。


(6)日米は縮小均衡から再出発せよ。世界同時不況を覚悟するしか解決の道はない。
  (同書175P)


下村博士のこれらの提言に耳を傾ける人は80年代にはほとんどいなかった。