大川端だより(333)


作家の村上龍さんが、S・ソダーバーグ監督の映画「チェ・ゲバラ2部作」(第1部「チェ・28歳の革命」・第2部「チェ・39歳・別れの手紙」)の推薦文の最初に、今回の世界的な金融危機に言及して、以下のような文章を書いています。


「○チェ・ゲバラの生涯
 08年9月のいわゆるリーマン・ショックで始まった世界的経済危機だが、循環的なものではなく、歴史の転換点だとわたしは考えている。金銭的利益だけを優先する企業戦略が破綻したと見るべきで、求められているのは景気回復などではなく、価値の転換であると思う。チェ・ゲバラが、生涯を賭して求めたのは、まさに金銭的利益以外の価値だった。」


ぼくもまったく同感で、単なる景気回復ではなく、まったく新しい思考と生活のスタイルが必要とされているのだと思います。『強欲資本主義ウォール街の自爆』(神谷秀樹著 文春新書 本体710円+税)を読むと、いかに彼奴らが欲の塊だったか分かりますよ。また、下記のような指摘を読むと、アメリカという国の構造的な欠陥が見えてきます。


ウォール街とワシントンとは、昔も今もしっかりと結託している。政府の高級官僚は、退職するとこぞって投資銀行プライベート・エクイティー・ファンドに迎えられ、大金持ちになる機会を与えられる。また、政府は元投資銀行家を高級官僚や海外公館大使などに採用する。」


神谷さんは、元住友銀行員で、その後ゴールドマン・サックスに転職し、そして今はニューヨークのウォール街に自分の投資銀行を経営してる人だけに、一々いうことに説得力がある。サブプライムローン問題みたいなことがななぜ起こるのかいまだに理解できない、という人には最適の本ですよ。“強欲資本主義”とは実に上手く名づけたものだと思いますね。