大川端だより(326)


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 “アソシエーション革命”って何?


アメリカの政治学者、レスター・サラモンが「グローバルなアソシエーショ
ン革命」という言葉を使ったのは、20世紀末に出現した地球規模のNPO
台頭を目撃したからだった。冷戦が終わり、社会主義陣営がこぞって世界の資
本主義マーケットに参入したため、市場経済が引き起こす矛盾を解消する役目
を誰かが果たさなければならなかったのだ。


▼では、アソシエーションとは何なんだろう。ぼくの電子手帳に入っているブ
リタニカによると、「ある特定の関心を追求し、一定の目的を達成するために
つくられる社会組織。結社とも訳す」とあり、米国の社会学マッキーバーが、
「コミュニティーが一定の地域のうえに展開される共同生活を意味するのに対
し、アソシエーションはそれを基盤としてその上に個々の人間の共通関心に従
って人為的、計画的に形成される結びつきである」としたことを説明している。


マルクスはアソシエーションを「自由な諸個人の連合」と言ったそうだが、
ベトナムに平和を!市民連合ベ平連)というのはアソシエーションの最たる
ものだったのである。思えば、1965年という年は、ベ平連、大阪ボランティア
協会、生活クラブ生協という日本のアソシエーションの3大老舗(ベ平連はす
でに解散しているが)が誕生した年だった。それから40年以上が経ち、いまま
たアソシエーションが脚光を浴びつつある。


▼「確かに、われわれはグローバルな『アソシエーション革命』のただなかに
あり、これは国民国家の台頭が19世紀後半に対して持ったと同じ重要な意義を
20世紀末に対して持つ、ということが明らかになるかもしれない。最終目標は
ひとつのグローバルな第三セクターである。つまり、株主または取締役へ利益
を分配することに専念するのではなく、国家の公式装置の外部で公共的諸目的
を追求する、自己統治的な民間諸組織の強大な隊列なのである。これら諸グル
ープの増殖は、国家と市民の間の関係を永続的に変更するかもしれない。」


▼上記は『アソシエーション革命へ【理論・構想・実践】』(社会評論社)か
らの孫引きであるが、レスター・サラモンの論文の一節である。これは、20世
紀末の状況についての記述であるが、今日まさにグローバルな金融資本主義の
バブルが弾けた時点の未来への見通しが語られているように感じるのはぼくだ
けだろうか? とくに「つまり」以降の文脈は示唆に富んでいるように思える。


▼「国家と市場」という巨大システムの二元論では社会(世界)をうまく回せ
ないことが分かったのが現在であるなら、その二元論を超えるしかないのだが、
それがアソシエーションという個人の連合体によって可能になるかもしれない、
という仮説が語られているのである。


▼サラモンが「最終目標はひとつのグローバルな第三セクターである」と言う
とき、その胸中を忖度すると、アソシエーションのアソシエーション、即ち、
アソシエーション連合による地球のガバナンス、ということではないかと推測
できる。国家と市場の多くの部分(権力)を諸アソシエーションに分権・委譲
することによって、地域経済と市民生活に身近かなガバナンスを実行する。な
ぜなら、とりもなおさず、国家と市場の失敗はそれらが地域経済と市民生活か
ら遠く離れてしまったためなのだから。(thayama)