大川端だより(322)


秋ですねえ。前回の日記を書いてからすでに1ヶ月を
過ぎてしまいました。このところ、仕事も市民活動も
バタバタと忙しく、ちょっとブログの更新をサボって
いました。しかし、本日「市民プロデューサー通信」
の155号を発行し、下記のような文章を書きました
ので、よかったら読んでください。秋なのでバックの
カラーも茶色に変えてみました。


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┃┃■ 黒ビールでも飲みながら・・・・132
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  「民主主義のファンダメンタルズ」


▼10月11日(土)に団塊アクションネットワーク主催の「『市民自治を学ぶ』
連続講座」の第1回目が開かれた。講師は帝塚山大学法政策学部の中川幾郎教
授。「市民自治とは」と題されたレクチャーはとても分かりやすく、改めて現
代における自治の意義が理解できると伴に、知識が整理できるとてもいいお話
だった。講義後の質問もたくさんあったし、アンケートの回答もほとんど賞賛
一色だった。受講者数は定員(36席)を超えるほどで、NPO法人でもないた
だの任意団体が主催した講座としては大成功だったと言えよう。


▼講座を主催して改めて感じたのは、「民主主義のファンダメンタルズ」とい
うことである。民主主義の基盤は、フツーの市民たちの広範で深いディスカッ
ションであり、それがどの程度存在するかによって、ある国や地域、また組織
の民主主義の度合が量られるのだと思う。


▼で今、この日本の社会に、広範な市民の深いディスカッションがあるのかと
自問すると、「否」と言わざるを得ない。フツーの市民だけではなく、政治家
や知識人の間にも深いディスカッションがあるとは思えない。国会や討論番組
でも論争(言い争い)をしているだけで、課題解決に至る本当の意味での話し
合いをしているようには見えない。


▼例えば、憲法9条の問題にしても、賛否は拮抗しているのに、一方は「9条
改正!」を叫び、もう一方は「絶対阻止」を声高に主張するだけだ。それでは
妥協点が見つからず、最終的には暴力に訴えるしか方法がなくなる。本当は賛
否拮抗するマターについて、みんなが冷静に議論し、課題を解決する方向を模
索するのが民主主義であり、そのことを「議する」という動詞で表わすのだ。


▼思えば「代議士」という日本語は、意味の深い言葉である。「代議」とは、
スーパー大辞林によれば、「他人に代わって議すること」「公選された議員が
選出住民に代わって議すること」とあり、代議士とはそれを行う人のことを言
うのである。因みに、和英辞書で「代議士」を引くと、「Diet member(国会
議員)」とか「a member of the House of Representatives(衆議院議員)」
とあり、英語には「代わって議する」という含意はない。


▼「代議」という言葉がいつごろからあったのか分からないが、おそらく幕末
から明治にかけて、福沢諭吉とか西周が「represent(〜を代表する、〜の代
理をする)」という言葉を翻訳するときに作り出したものだろう。しかし、リ
プリゼントには直接的に「議する(話し合う)」という意味はないので、翻訳
者が本質を掴んで「代議」と訳したのだろう、と推察できる。これは、卓見で
あった。


▼話を本筋に戻すと、民主主義の根本は「議する」ことである。フツーの市民
の地域社会での広範で深い議論があり、意見の集約があってこそ、代議制は成
り立つのだが、そういう基盤がこの社会においては脆弱なので、もっと強固に
する必要があるだろう。団塊アクションネットワークの連続講座が、前半のレ
クチャーだけではなく、後半の質疑応答や議論のための時間をたくさんとって
いるのはそういう謂(いい)なのである。(thayama)