大川端だより(312)


メルマガ「市民プロデューサー通信」151号に下記の記事を掲載しました。



┏┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃┃■ 黒ビールでも飲みながら・・・・128
┗┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  「釜ヶ崎の花屋さん」


▼6月15日(日)に應典院であった「未来世紀ニシナリ」の先行上映会とシ
ンポジウムに行ってきた。この映画は、キネマ旬報の文化映画ベスト3に入っ
た作品で、西成・釜ヶ崎(あいりん地区)の新しい動きの“仕掛人”3人の活
動を描いたものである。映画のあと「釜ヶ崎ふるさとの家」の本田哲郎神父の
基調講演があり、映画の登場人物2人が加わってのパネルディスカッションへ
と続いた。


▼映画の登場人物でパネルに加わったのは、(株)ナイス「くらし応援室」の
佐々木敏明さんと(株)美交工業の福田久美子さんだった。それに本田神父と
司会役として應典院の山口洋典さんが登場。ディスカッションの最後に、先日
起こった“暴動”について会場から質問があり、それに対して本田神父が「私
は労働者の暴動という表現の方法を支持する」という意味のことを言っておら
れたのが印象的だった。質問をした人ともう1人の参加者の間でちょっとホッ
ト・スポットになりかけたやり取りがあったが、時間的な制約もあり、山口さ
んが打ち切ったのは賢明だったと思うが、もう少し議論を深めてもよかった。


▼佐々木さんと福田さんは、どちらも営利セクターの方だが、佐々木さんは企
業のなかのくらし応援室という非営利部門の人だし、福田さんは「ビジネスと
してやっていることにこだわりたい」と言っておられたが、ものすごく儲かる
商売でないことは明らかである。コミュニティビジネスという言い方が適当か
どうかは分からないが、限りなくそれに近い、ホームレスや障害者の生活支援
の仕事である。


▼福田さんの話の中でとても面白いと思ったのは、釜ヶ崎に花屋さんを開業し
たという話だった。このことは、5月12日の朝日新聞の夕刊でも取り上げら
れたので、ご存知の方も多いと思うが、釜ヶ先と花はそぐわない、と感じる人
も多いと思われる。朝日の記事によると、開店準備中に通りかかった労働者が
「ここで花が売れたら土下座したるわ」とからかったそうだが、あにはからん
や花は売れているそうである。


釜ヶ崎で花屋をやろう、と思ったきっかけがどういうことだったのか、質問
しそびれたので分からないが、発想としては秀逸である。これは福田さんの会
社が経営しているというより、釜ヶ崎支援機構などNPOとの協働による出店
らしい。将来のイメージとしては、雑誌「ビッグイッシュー」の花版を目指し
ているとのことで、ホームレスの人たちがリヤカーでオフィス街や商店街に出
向き花を売って生計を立てられるようになることである。


▼花と釜ヶ崎。一見相容れないもののように思いがちだが、実は花の癒し力、
エンパワメント力は釜ヶ崎にこそ必要なものなのかもしれない。1日の仕事
や路上生活に疲れた人たちが、酒と博打にではなく、花にわずかな金銭を費
やす時、そこに「未来世紀ニシナリ」の希望の光が見えてくるのではないだ
ろうか。かつてアメリカのフラワー・チルドレンが武装した兵隊に花を差し
出して反戦平和をアピールしている図が脳裏に蘇った。(thayama)