大川端だより(306)


日曜日は、應典院で行なわれた「チベット発東京経由『仏リンピック』大阪大会」というイベントに参加。温かくて静かな人間の触れあいと圧政に対する怒りを感じるとてもいい集会だった。メインゲストは文化人類学者の上田紀行さん。ぼくも以前インタビューをさせていただいたことがある方だ。氏の講演は、ダライ・ラマとの5時間にわたる対談について、ビデオ映像を交えての話が中心で、印象的だったのは法王に対する「ものすごく頭のいい人」というコメントと、実は中国の起死回生策は、北京オリンピックダライ・ラマを招待することだ、という話。


そのほかのゲストは、チベット仏教普及協会ポタラカレッジ>副会長のクンチョック・シタルさん、「れんげ国際ボランティア会」会長で真言律宗別格本山誕生寺貫主の川原英照師、そしてドキュメンタリーロードムービーチベット チベット」の映画監督・キム・スンヨンさんの3人。また、総合司会は應典院主幹の山口洋典さんだった。


お寺のイベントらしく、最初に「チベット騒乱之犠牲者追善菩提」法要があり、参加者も焼香を行ない、いちばん最後は隣接する大連寺の鐘撞堂で「非暴力による解決の願いの鐘」を撞いて解散、というものだった。途中は、上田さんの講演に続いて、「仏リンピック」とあるように、各選手(ゲスト)が次々壇上に上がり、自分とチベットの関係について話すという趣向だった。とても感心したのは、おそらく山口さんのアイデアだと思うが、ゲストの発言の中で重要だと思われる言葉を次々とパソコンに打ち込んで大きなスクリーンに映し出していたこと。ボラ協主催のシンポジウムなんかももっともっと工夫をしなければならないと思った。


ゲストの発言で印象的だったのは、キム監督の「まず知ること。知らないと何も始まらない」という言葉と、上田さんの「日本仏教界の弱腰についてどう思いますか」という意味の質問に対して、川原師が「日本人全体が腰抜け」と吐き捨てるように言われたこと。確かに日本人は、欧米の人たちに比べて、人権問題や圧政に対してあまり発言も行動もしない。今回のこのイベントも、大阪では数少ないチベット関連の集会だったのに、参加者数はせいぜい80〜90人程度。せめて300人ぐらい集まる集会にしたかったなあと思う。それ以上の値打ちのある、大いに蒙を啓かれるイベントだった。