大川端だより(303)


今、大阪城、大川端周辺はツツジが盛りである。夕方の5時ごろから自転車で1時間ほど回るとあちらこちらにツツジの植え込みがある。いま時分が一年中でいちばんカラフルな季節だろう。


ところで、皆さんは『ルポ 貧困大国アメリカ』(堤未果著 岩波新書)を読みましたが。すべての読書子必読の書です。レーガノミックス以来の新自由主義アメリカにどういうことをしたか、というルポなのですが、本当に恐ろしいと思いました。因みに、新自由主義とは、ウィキペディアによると、下記のとおりです。


市場原理主義の経済思想に基づく、均衡財政・福祉および公共サービスの縮小・公営企業民営化・経済の対外開放・規制緩和による競争促進・情報公開・労働者保護廃止などをパッケージとした経済政策の体系、競争志向の合理的経済人の人間像、これらを正統化するための市場原理主義からなる、資本主義経済のレジームをいう」。


要するに、経済を立て直すために、すべてを市場経済に任せ、できるだけ「小さな政府」で行こう、ということなのだが、教育や福祉、医療、そして軍事まで民営化したことによって、極端な二極化が進行し、貧しい人たちはお金がないので、教育も福祉も医療も受けられず、起死回生を願ってみんな軍隊に入ってイラクへ出兵してしまうのだ。


「市場」というのは弱肉強食の世界だから、必然的に勝ち組と負け組ができる。負けた人たちは、政府が教育、福祉、医療のための予算を削りに削っているので、民間の金融機関からお金を借りるしかなく、結局多重債務に陥ってしまう。そして、どうしようもなくなった人たちの耳元で「エエ話がおまっせ」と囁きかけるのが、軍のリクルーターであり、民間軍事会社派遣社員勧誘員なのである。


この本を読んでいると、9・11を利用して、東西冷戦に変わる「対テロ戦争」という緊張を作り出し、軍隊と大企業を強化して、大儲けをしている奴らの姿が浮かび上がってくる。ブッシュやラムズフェルド、チェイニーといった政治ビジネス輩がどれだけアメリカの民衆を食い物にしているかがわかる。現在、民間の戦争請負業界ではイラクは「ゴールドラッシュ」だと言われているそうだ。


市場原理によらない非営利セクター、市民セクターを拡充していくことの必要性が本当によく分かる必読の書です。