大川端だより(298)


20日発行の「市民ライター通信54号」に下記の記事を書きました。


「死者の肖像権はどうなっているのだろう…」  by thayama


今、ネスカフェのテレビCFに弧狸庵先生こと、亡き遠藤周作が“出演”して
いる。少し前までは、缶コーヒーの宣伝に故黒澤明監督が桑田啓祐と“共演”
していた。亡くなった有名人がテレビCFに出演する例は、これまでも沢山あ
った。日本人なら、松田優作夏目雅子、外国人ではジェイムス・ディーンや
オードリー・ヘップバーンのCFが記憶に新しいところではないかな。


遠藤周作の場合、生前もネスカフェのコマーシャルに出ていたので、ちょっと
事情は異なるが、あの本物志向の黒澤明が缶コーヒーを飲んでいたとは思えな
い。また、オードリーは生前、死んでから日本の「午後の紅茶」とか、三井住
友銀行とか、派遣会社パソナのCFに出演することになろうとは夢にも思わな
かったにちがいない。


ぼくがもし、世界的に有名な俳優で、死後テレビCFに出ることになって、そ
れが自分の嫌いなブランドの商品の宣伝だったら……と想像すると、死ぬほど
(もう死んでるのか<笑>)嫌だ。死者の肖像権はどうなっているのだろう?


著作権は、著作権法で「著作者の死後または公表後」50年と保護期間が定めら
れているが、肖像権の保護期間は明確に法律で定められているわけではない。
法律的に明文化された権利ではないので、学説も下記のようにいろいろ。


(1)著作権と同じく、死後50年間、肖像権がある。
(2)法律がないので、その人が死去すれば肖像権も無くなる。
(3)人の名誉に関することなので、著作者人格権と同じく永久的。


3番目の「著作者人格権」というのは、財産権としての著作権(狭義の著作権
が他者に移転された後も著作者が保有する権利(ベルヌ条約6条の2第1
項)であり、権利主体は著作権者ではなく著作者自身である。つまり、保護対
象が財産的利益ではなく、人格的利益であり、狭義の著作権(著作財産権)と
は区別されている。


つまり、3番目の学説を参考にすると、肖像権というのは、肖像(人の姿・形
及びその画像など)に対してその人が持つ基本的人権のことであり、人格権と
財産権に分かれるが、人格権の部分は永久的だから、死後であっても、その人
の意思に反するような使い方はできない、ということではないだろうか。


オードリーの場合、彼女の「肖像権」の財産権の部分は遺族が保有しており、
著作物としての映像の権利は各映画会社等にあるので、出演映画の映像を使
う場合は両方からの許諾が必要となるようだ。


しかしそれは財産権の部分だけのことで、彼女の人格権を考えると、はたして
彼女が銀行や人材派遣会社のCF出演を喜んだかどうか、大いに疑問がある。
何にしても、自分が好きだった著名な人物の肖像が生前のイメージと異なる
CFに使われているのを見るのはとても抵抗がある。