大川端だより(294)


「考えてみれば、常識というものはしみじみありがたいものだ」


今読んでいる梨木香歩の『裏庭』(新潮文庫 590円)の中の一文。若い頃は常識をいかに脱却するか…に意を用いたが、今ではこんなセンテンスにとても魅かれる。この物語の概略は下記の通り。


「昔、英国人一家の別荘だった、今では荒れ放題の洋館。高い塀で囲まれた洋館の庭は、近所の子供たちにとって絶好の遊び場だ。その庭に、苦すぎる想い出があり、塀の穴をくぐらなくなって久しい少女、照美は、ある出来事がきっかけとなって、洋館の秘密の『裏庭』へと入り込み、声を聞いた−−教えよう、君に、と。少女の孤独な魂は、こうして冒険の旅に出た。少女自身に出会う旅に。」(文庫本裏表紙の惹句)


これは完全なファンタジー・ノベルです。まだあと3分の1ほど残っているが、結末は分かりません。亡くなった河合隼雄さんが解説を書いています。