大川端だより(232)


2006年2月に生駒市長に就任した山下真さんは、92年3月に東大の仏文を卒業したあと、同年4月に朝日新聞に入社し、早くも12月に退社している。その後、94年4月に京大法学部の3年に編入。同学部を98年に卒業し、2000年4月に弁護士登録(大坂弁護士会)。そして、06年2月に生駒市長に就任、という目まぐるしい人生模様である。現在39歳、全国の首長の中では最も若い方だろう。


市長選に立候補した経緯は、生駒市ニュータウン開発の是非を問う住民投票条例制定のための直接請求をしようという市民運動が起こり、山下さんが代表世話人になったことから始まった。住民投票条例は実現できなかったが、古い体質の生駒市政の改革を願う市民の地道な活動は継続され、市民派市長への期待感が高まった。山下さんも候補者探しに奔走したが、誰も引き受け手がおらず、弁護士として独立・開業したばかりの山下さんが「不戦敗だけは避けよう」と選挙に出馬することになったのである。


生駒市は人口約12万人のベッドタウンで、大阪へ通勤する新住民と古くからの住民が混在している。議会や行政の大部分は旧住民によって占められ、多数派の新住民の税収によって比較的ゆたかな財政を良いことに箱モノ建設を繰り返してきていた。ところが、少子高齢化やバブルの崩壊で、財政が苦しくなったにもかかわらず、ニュータウンや総合スポーツ公園の建設計画といった愚を繰り返したのは、そこにオイシイ利権が絡んでいたからだろう。


中本前市長と酒井前市議会議長の汚職はそのような市政の状況の中で起こったことだが、山下新市長による“伏魔殿”改革はちゃくちゃくと成果をあげているように見える。例えば、7月10日の市長ブログによると、「市政運営の透明性を確保するとともに、公正な職務の執行を推進するため、生駒市法令遵守推進条例(コンプライアンス条例)を制定」したとある。どのような内容かというと、下記(市長ブログより抜粋)のようなものである。


法令遵守に関する市及び職員の責務の明文化
 常に公正な市政の運営を図り、法令遵守に関する体制整備を行うことを市に義務付けるとともに、市民全体の奉仕者である職員の行動のよりどころを定めています。
2 要望等への適正な対応と記録制度の構築
 外部から寄せられる様々な意見や要望などを積極的に受け止め、市政運営に活かしていくとともに、公正な職務執行を確保するために、職員が受けた要望や提案などを記録に残し、その概要等を公表することとしています。
3 公益目的通報制度の創設
 昨今の組織の不祥事については、いわゆる内部通報から明らかになるケースが増えています。違法又は不当な職務執行が行われていた場合には早期に発見・是正できるよう、公益目的通報制度を設けました。
法令遵守体制の整備
 「コンプライアンス」の仕組みを徹底し、推進するために、第三者機関として「法令遵守委員会」を設置し、要望等の当・不当、公益目的通報などに関する審査・調査の権限を付与することによって、市政運営の透明性の向上を図ります。


とりわけ興味深いのは、3の「公益目的通報制度」である。なかなか一般の行政職員が権力者である市長や議長の不正を正すのは難しいが、このような制度があると、内部告発がしやすくなり、汚職などのチェックがしやすくなるのではないだろうか。


東国原知事の華々しい活躍がマスコミを賑わせているが、関西においては生駒市の山下市長が地味ではあるが、ちゃくちゃくと市政改革を成し遂げつつある。その山下真さんが、11月4日の「遊学亭」にゲストとして来て下さることに決った。亭主役はぼくが務めます。