大川端だより(227)


昨日の深夜、というか24:35だったから、今日の朝か、関西テレビでやっていたドキュメンタリー「コーポレートメディア〜放送は誰のものか〜アメリカで見た記者たちの苦悩」というのがとても興味深い内容だった。関西テレビは、「あるある大事典」でヤラセ番組を放映して大きな社会的問題になったが、この番組では若い女性記者が、「放送は誰のものか」という問いの答えを探すために、日本とアメリカの新しい市民メディアの動きを追っていた。


アメリカのニューヨークにあるDCTV(Downtown Community Television Center)の話はとりわけ刺激的だった。このセンターでは、独自のドキュメンタリー番組を制作して、それらをいろんなメディアに販売するとともに、子どもたちにビデオカメラや編集機材などの使い方や編集の仕方を教え、独自の番組を制作をさせる「ユース・プログラム」を開催している。このセンターを開設したのは、ジョン・アルパートというプロのドキュメンタリー作家とそのパートナーである津野敬子さんだ。


今、アメリカではコーポレートメディア(「企業マスコミ」とでも訳しておこう)に対する市民の不信感が急増しているという。とくに湾岸戦争イラク戦争でマスコミが戦争ムードと愛国心を煽ったが、結局真実の報道は何もせず、国や企業の言いなりに情報を垂れ流していることに対する危機意識が強く、そういうコーポレートメディアに対抗する市民メディアの活躍が目ざましい。そういう市民メディアのひとつが上述したDCTVである。


創始者のジョン・アルパートさんは、もとは大手ネットワーク局の記者で、なんども戦地に赴き、すぐれたドキュメンタリー作品を制作。いくつもの賞を獲得しているが、ある作品が局幹部の逆鱗に触れ、解雇される。そこで彼は、スポンサーと国に牛耳られているコーポレートメディアには創れない、市民の側からの作品を創ろうと、DCTVを設立する。


ぼくはこの放送の中で、はじめてパブリックアクセスセンター(PAC)の存在を知ったのだが(遅れててゴメン!)、PACというのは、ビデオ番組を制作する市民に器材の貸し出し、ビデオ編集などの講習を行うところである。アメリカでは「市民が自主的に制作したビデオを放送する地域密着チャンネルの設置が法的に義務付けられているため、各地に存在し活発に活動している」という。番組の中でもいろんな人たちが自分たちの創った作品をPACへ持ち込んでいた。日本でもこれと同様の組織を作ろう、という動きもあるようだ。市民がいくら良い作品を作っても放送できないと意味がないので、PACのような組織がぜひ必要である。


もちろん日本でも市民メディアの動きはある。例えば大阪にある「てれれ」はHPで次のように宣言している。


「私達は、今迄表現や情報発信の場から遠くにいた人たちが、自分達のメディアを持ち、発信していける状況を作っていきたいと考えています。自分達が面白いと思うもの、どうしても伝えたいことをどんどん発信していきたいと思っています」。


ぼくらは、テレビや新聞は市民から遠くはなれた存在だと思ってきた、いや思わされてきたが、インターネットや情報機器の発達で、それらがどんどん個人(市民)に近づいてきている。だから、じゅうぶんそれらを活用して、どんどん市民目線の情報発信をしていくべきであろう。