大川端だより(195)

日本のテレビ関係者はちょっとオカシイのではないか。今日の朝の各局のニュースワイドショウではどこともパリス・ヒルトンというアメリカの小娘のことを大きく取り上げていた。どこの誰かと思ったら、ホテルチェーン・ヒルトンのお嬢様でタレントだということである。読売新聞の朝刊は社会面で140文字ほどの扱いだった。


その記事によると、「有名ホテルチェーンの創業者一族でタレントのパリス・ヒルトンさん(26)が26日未明、収監されていたロサンゼルス近郊の刑務所から出所した。飲酒運転で保護観察処分中に車を運転したとして、禁錮45日の判決を受けていたが、服役中の態度が良かったことから、23日間(自宅謹慎の1日を含む)で釈放が認められた。」とのことで、これ以上付け加えることは何もない記事である。


しかしテレビ・ニュースで、ヒルトン嬢が嬉しそうに出てくるところを長々と放映され、コメンテーターが何やかやと発言しているのを見ると、日本人のセレブ好きには呆れてしまう。もっと映像で伝えなければならないことがあるだろう。パレスチナイラク、アフガン、沖縄など、アメリカの軍隊がどんなことをしているのか…。おそらくヒルトン嬢のことがアメリカで大きく取り上げられたのは、他の重大事に対する目くらまし的な意味合いもあるのだと思う、


俳人の三橋敏雄に「戦争にたかる無数の蝿しづか」という句があるが、おそらく今でも世界中で戦争や汚職や政治的不正というご馳走にたかっている無数の蝿がいるはずだ。テレビ、特に報道番組ではそういうのを暴いて、映像ではっきりと見せて欲しいと思う。それをしないとテレビジャーナリズムはインターネットでいろんな市民が発信するブログを中心とするメディアに本当に勝てないと思う。また、俳句というたった17文字の文学がもつインパクトの足下にも及ばないだろう。


蛇足ながら、読売の記事にある「服役中」という言葉は適切ではないように思う。ヒルトン嬢は禁固刑で懲役刑ではないので、「服役」はしないと思うのだが…。因みに、禁錮というのは、労務を課さずに監獄に拘置する刑だから、やっぱり「服役中」は間違いだろう。