大川端だより(193)

今日も一日むちゃくちゃ暑かったなあ。まだ7月にもなっていないから、あと60〜70日間は猛暑が続くだろう。ぼくは7月15日が誕生日なのだが、夏は苦手で、どちらかというと冬のほうが体質に合っている。汗をよくかくので身体がいつもべとついているし、すぐ汗臭くなるのも嫌だ。でもまあ、梅雨があったり暑い夏があってはじめて米は秋に実るのだし、紅葉の赤も一層鮮やかに輝くのだろう。


こんな暑い日はやっぱり水辺を散歩したり、サイクリングするのがいちばんだ。その点、大川端は本当にいいところだと思う。住むところはぜったいに海が近かったり、街中を川が流れ、できれば山が見えるところが嬉しい。そういう条件を満たしているのは関西ではやっぱり京都だろうな。


世界で言うと、ぼくが1年住んだことがあるバンクーバーかな。ロンドンやパリやニューヨークは河はあるけど山が見えない。その点では大阪も同じだけど、大都会で山が見えるところはそんなに多くないと思う。でも昔は、江戸からいつも富士山が見えていたようだ。それにしてもバンクーバーは本当によい街で、最初行った時、水が本当に美味しいのに感激した。


石坂洋次郎に『山と川のある町』という作品があるが、あれは秋田県横手市だそうだ。石坂洋次郎は若い頃、1926年から13年間も横手高等女学校(現横手城南高)で教師をしていて、出世作『若い人』を書いた。慶応大学出のハンサムな先生だったから、女学生には人気があっただろう。ぼくは中学生ぐらいのときにずいぶん石坂洋次郎の小説を読んで、石坂ワールドに憧れたものだ。戦後民主主義下の明るい男女関係を書いて、『青い山脈』なんかも横手での教員生活がベースになっている。


石原裕次郎は晩年太ってしまってテレビの刑事ドラマ警察官僚がすっかり身についてしまっていたが、若い頃の裕次郎はアクション映画もさることながら、石坂原作の青春物での戦後世代ののびのびした明るい若者役がよく似合っていた。ぼくにとっての裕次郎のイメージは、石坂物青春映画のそれである。


でも今の若い人は石坂洋次郎など読まないのだろうなあ…。