大川端だより(191)

NHKに「福祉ネットワーク」という番組があり、時々見る。今日の昼、再放送でフィリピン人の介護士についてやっていた。日本政府がフィリピンから介護士を受け入れる決定をしたので、同地の介護士学校が興味を示しているというのだが、受け入れ条件が厳しすぎるのである。4年制大学を出て、介護の専門職としての資格を持っていることが必要だという。そして、日本で介護職に就くことができたとしても、4年間日本にいたら、介護福祉士の国家資格を取らない限り、日本で働けなくなるというのだ。


番組の中で、日本の高齢者施設の理事長がフィリピンの介護学校を視察し、学生に卒業後の進路(就職先の希望国)を訊ねたら、最も多かったのはカナダで、あとはイスラエルとかアメリカが多く、日本と答えたのはたった一人だった。それはそうだろう。カナダなんか2年間働いたら永住権をくれるらしいし、英語も通じるので、彼らにとってはどう考えても日本は不利だ。どうも日本の官僚の考えることは現場の実情を全く無視している。介護職に四大卒の資格が必須とは思えないし、働きながら日本語を学んで国家試験を受けるほど読み書きに精通できる外国人がたくさんいるとは思えない。


番組でフィリピン人の学生が言っていたのは、「世界には介護の仕事がたくさんあり、フィリピン人は大家族で高齢者を敬う伝統があるので、介護職に向いているから、引く手数多(あまた)です」というようなことだった。本当に日本は自分たちの都合だけで、過度なクオリティを要求するから、いずれ介護士だけではなく世界中の労働者からそっぽを向かれてしまうのではないだろうか。それでなくても深夜シフトだと1人で20人をケアしなければならない労働環境で、おまけに賃金も安く、こんなことでは日本の介護分野に未来はないと思う。これから先10年間で50万人の介護士が必要になるというのに…。