大川端だより(168)

「アイデアだけはバーゲンセールしてもいいぐらいあるんです。
 …でも、マル(円)が描けない」


これは二三日前の深夜、NHKアーカイブスで聞いた手塚治虫の言葉。番組は晩年の手塚の仕事ぶりを伝えるドキュメンタリーだったが、57か8の彼は相変わらず忙しく、毎日漫画を描く仕事をこなしている。だが、だんだん昔のようには描けなくなってきており、若いころなら難なく手で描けた真ん円が描けなくなったことを嘆いていた。しかし、漫画のアイデアはまだまだ一杯あって、あれもやりたい、これもやりたい、と思うのだ。手塚治虫が亡くなったのは60歳のときで、ぼくは7月の誕生日が来ると61だから、おそらく手塚の享年を超えることになるだろう。でも、「アイデアだけはバーゲンセールしてもいいぐらいあるんです」という手塚の言葉と似通ったところはぼくにもある。よく若い人のほうがアイデアが豊富だ、という言い方をするが、そんなこともないと思う。


戦後60年を過ぎて、戦後民主主義の安定基盤が崩れてきているような気がする。団塊の世代を中心としたオヤジ・オバハン世代がさまざまなアイデアを出しながら「平和と民主主義」の基盤を確固としたものにしておく必要があると思うのだが、なんか心許ないところもあるなあ。でも、やるしかない。「団塊アクション・ネットワーク」は、着実に「行動」を準備しつつある。フフフフ。