大川端だより(142)


ぜにのないやつぁ

俺んとこへ来い

俺もないけど 心配すんな

みろよ 青い空 白い雲

そのうちなんとかなるだろう


植木等が死んだ。彼が演じたのは、日本経済の高度成長時代に、企業のサラリーマンというもののノーテンキな一面をカリカチュアライズして、パワフルな楽天性を身にまとった人物だった。なかでも、上に掲げた「だまって俺について来い」(青島幸男作詞)と題する歌は、当時の日本の全社会的な楽天性を象徴している。


歌詞の二番は「彼女のないやつぁ」、三番は「仕事のないやつぁ」で始まり、「俺んとこへ来い」「俺もないけど 心配すんな」と続く。そして「みろよ」以下の自然現象が、二番は「波の果て 水平線」、三番「燃えている あかね雲」に変わり、最後のフレーズは同じく「そのうちなんとかなるだろう」で締めくくられる。ぼくはこれを聴くと、今の中国やインドにはこんなタイプの楽観的人民がたくさんいるに違いない…と思ってしまう。