大川端だより(141)


昨日の夜、久しぶりに映画館で映画を見た。ホクテン座1という小屋で、天七の商店街の外れにある。「武士の一分」が30日が最終日だったので、遅ればせながら見に行ったのだ。実はぼくは山田洋次監督の時代劇三部作(「たそがれ清兵衛」「隠し剣鬼の爪」「武士の一分」)の前二作は見ていて、真田広之宮沢りえ主演の「たそがれ清兵衛」は良かったけど、「隠し剣鬼の爪」は主演の永瀬正敏(女優は松たか子)の武士としての演技が半端で、あまり感心しなかった。さて、キムタクはどんな感じなんだろう、という興味もあって見に行ったのだが、これがなかなか良いのである。彼の武士としての、また目が見えなくなってからの演技に違和感がなく、すんなり物語に入っていけた。女優の壇れいもキレイだし、脇を固める笹野高史桃井かおり坂東三津五郎緒形拳小林稔侍といった助演陣もさすがに上手い。


木村拓哉は、テレビドラマの「華麗なる一族」ではとっても違和感があった。「そんな昭和30年代の企業人なんておらへんやん!」という感じで、「ヒーロー」などのただただカッコええアイドル主演ドラマのパターンと異なり、とても中途半端な感じがした。しかし、「武士の一分」は違った。もちろん山田洋次監督の演出の冴え、というのもあるのだろうが、キムタクはもうSMAPでの歌手活動、タレント活動なんかやめて、俳優に専念したほうがいいのではないかと思ってしまった。これは、ある意味で中途障害者の映画だと思うのだが、その苦悩と、徐々に周りの人びとの愛情に助けられて「武士の一分」を成し遂げる過程がよく描かれていたと思う。