大川端だより(139)


  18:30から大阪駅前第二ビルで、大阪市大大学院創造都市研究科主催の「指定管理者制度NPO」と題するシンポジウムに一般参加。指定管理者制度については関心が高いようで、おそらく100名を越える参加者があったと思われる。参加費無料、予約不要という信じられない運営方法は、100人ほど収容の会場に対して、「そんなに来るはずはない」と主催者側が考えたからだったと思うのだが、企業やNPOの同制度に対する関心の高さが伺われた。

  

  シンポジウムの内容は、最初、主催者側から制度の解説があったあと、九州某市のあるNPOの事務局長の詳細な事例報告があった。そのあと、大阪ボランティア協会のM主幹から、報告に対する感想と問題提起があり、続いて会場との質疑応答&ディスカッションという一般的な構成だった。



  現在、全国の指定管理者の数は約6万件、そのうちNPOが管理者になっているのはやっと千件を超えたところ、という状況らしい。指定管理者制度は、そもそも行政の財政難からスタートし、「公の施設」の運営を民間に任せ、人件費と運営費を低減させるとともに、サービスの充実を狙ったものだったが、それに乗りたいNPOや企業も多く、単なる財政的節約の域を出ていないケースも多いようだ。つまり、なんのかんの言っても、行政の財政負担を低減することが真の目的だから、運営を「安くあげざるを得ない」状況が生まれており、ものすごく低い値段で施設の管理運営を請け負っているケースが多い。


  しかしほくは、最初は行政の財政難克服というニーズからスタートしても、その根本に「住民自治」「市民自治」というコンセプトが貫徹していればよいと思うのだが、九州のケースを見ていると、自分たちのミッションは確固としてあり、それに沿って効果的に運営されているようだが、やっぱり団体の運営と存続のために指定管理を取るといった、ある意味での本末転倒があるような気がしてしかたがなかった。


  それはどういうことかというと、事例報告者が自分たちが提出した事業提案書の公開を絶対に認められない、と言っていたからである。行政に提出した事業提案書には自分たちのノウハウが詰め込まれているからだと言うのだが、それは次回の指定管理申請時に他の団体が閲覧できると自分たちにとって不利になるからだ、という意味にしか取れなかった。


  それって本末転倒ではないだろうか。だって、彼らが管理している「公の施設」は税金によって市民のためにつくられたものなのだから、市民にとっては誰が管理していようと、それが安価で使いやすく、その設立主旨に見合っていればいいことなのだから…。


  もちろんぼくも、指定管理を勝ち取った事業提案書を公開したくない、という彼らの気持ちは痛いほどよくわかるし、彼らがものすごく一生懸命に自分たちのミッションを実現しようと頑張っており、施設運営にも平準化などの業務改善に取り組んで立派にやっていることは確かである。しかし、それでもやっぱり、NPOは ビジネスではなく、ミッション・オリエンテッドな組織なのだから、提案書も公開して、いいアイデアは社会の共有財産とするべきではないのかと思ってしまった。これは厳しすぎる意見なのだろうか…。