大川端だより(131)

 公園に女児の赤い靴が落ちていた。「赤い靴はいてた女の子…」という、あの哀愁ただよう童謡を知らない人はいないだろう。なぜ、彼女は「異人さんに連れられて行っちゃった」のだろう、という疑問を感じたことのある人も多いに違いない。実は女の子は実在した。

 「岩崎きみ」という名前だそうだ。明治35年7月15日生まれと言うから、ぼくと誕生日が一緒である。連れて行った異人さんの名も分かっている。アメリカ人の宣教師チャールス・ヒュエットという人である。静岡県の旧不二見村で母親の岩崎かよから生まれたきみちゃんは、かよに連れられて北海道に渡り、母親の再婚相手、鈴木志郎とともに開拓農場に入植する。

 しかし、その労働の厳しさから、3歳のときにきみちゃんはヒュエット夫妻の養女に出される。ただ、彼女はあの歌のようにアメリカには渡ってはいなかったのである。そのことについては母親のかよも作詞した野口雨情も知らなかったようだ。アメリカで幸せに暮している、と思っていたに違いない。きみちゃんの最後はとても悲しいもので、あの歌の哀調の理由が分かったような気がした。詳しくは、下記URLをご覧ください。

http://jin3.jp/kimi/kimi.html