大川端だより(114)

 「勇気こそ地の塩なれや梅真白」という中村草田男の有名な句がある。「地の塩」というのは、聖書の「マタイ伝」の中に出てくる言葉で、塩が食物の腐敗を防ぐように、世の中の腐敗を防ぐ者たちという意味だそうだ。
 この句は、昭和十九年に学徒出陣する教え子に贈られた句である。「お国のために死んで来い」とも言えず、まして戦時中でもあり「生きて帰れ」とも言えず、真の勇気をもって生還して欲しい、そして将来、社会の腐敗を正すような人になって欲しい、との願いを、冬の寒さに耐える凛とした白梅に喩えたのだろうか…。