大川端だより(109)

 今日の読売新聞の朝刊に、作家の井上ひさしさんが夕張市のことを書いていた。井上さんは、夕張市は市をやめて村になるべきだという。炭鉱の最盛期は12万人いた人口が今は1万3千人に減っており、それに合った適正な行政単位は「村」であり、村になるといろんな行政的な仕事が近隣の町や市にやってもらえることになるのだという。地方自治法上も、市から村への転換は可能らしい。もちろんそんな「降格」を自ら行ったところは今までどこもなく、村はみんな町や市になりたがる。しかし、なんでもかんでも拡大していくことが善ではないはずだ。とくにこれからは、どの分野でも「縮小」による最適化という発想が必要になるのではないか。

 とにかく今日本は、国と地方公共団体の借金を合わせると、一説によると、1,200兆円という気の遠くなるような額になるという。国民一人当たり1,000万円の借金をしていることになる。これらはいつか返済しなければらないのだが、国も自治体も、国民も、なんとなく何とかなると思っている。そしてますます、歳入という名目での借金が増えていく。純粋な収入は税収や事業収入や利息収入で、国債や市債などは発行してもお金は入るけれども実は借金なわけで、とりあえず借金をしてその場しのぎをしている、多重債務者と変わらない。やがては返済しなければならないのに、いま苦しいから、またそれ以外に手がないので、雪ダルマ式に借金まみれになってしまう。夕張市民の現状は、実は日本人すべての現状なのである。