大川端だより(95)

キムタク主演の鳴り物入りドラマ「華麗なる一族」を観た。時代は昭和40年代、日本の企業がこれからどんどん成長し、海外へ進出していく頃の話である。キムタクは阪神特殊鋼とか言う鉄鋼会社の専務役である。北大路欣也扮する父親は阪神銀行頭取で、地方の企業グループ一族の物語。原作が山崎豊子だから、どうしても「白い巨塔」と観くらべてしまう。

TBSの開局55周年記念ドラマで、フジテレビの月9ものとはちょっと趣が違う。脇を固める役者陣もスゴイ顔ぶれだし、昭和40年代の神戸の街並みなんかもコンピュータ技術で再現されていて、いかにもお金のかかっている感じのする造りである。

原作を読んでいないので、これからのドラマの筋立てはよく知らないが、どうもキムタクは父親の子どもではなく、お祖父さんが父の妻(つまりキムタクの母親)にレイプまがいの仕儀に及んで生ませた子らしい。ぐちゃぐちゃドロドロの展開がありそうで、面白そうではある。

さて、しかしながら、二つ三つ気になる点がある。一つは原作でどうなっているのか知らないが、神戸の会社なのに主役級はほとんど誰も関西弁を喋らないこと。それからまた、キムタクのあの髪型は、絶対当時のビジネスマンがしていなかったものだ。あの頃の企業人なら当然髪はオールバックか七・三でしょう。決定的に不満だったのはキムタクが企業の重役にぜんぜん見えないことである。

木村は、「武士の一分」でズラを付け、東北訛りで喋ったのだから、関西弁、七・三分けでやらしてみたらよかったのに…。そしたら、新境地を拓いたかもしれない。制作サイドが今のキムタクのイメージを残しつつ、今までのヒーローものにはない面を出そうとしているのがかえって禍しているように感じた。