大川端だより(86)

 今日は小晦日(こつごもり=大晦日の前の日)。町を歩くと、大阪天満宮は正月準備で忙しそう。ところで、『悪党芭蕉』を読み出したけど、変なところで引っかかってしまった。嵐山氏は、「古池や蛙飛こむ水の音」について、蛙はよっぽどのことがない限り、音を立てて水に飛び込まない、「池の端より這うように水中に入っていく」というのだ。また、蛇などの天敵に襲われて飛び込む必要がある場合でも、「音をたてずにするりと水中にもぐりこむ」と書き、「水の音」は芭蕉の創作だと断じている。つまり、「古池や」は写生句ではなく、フィクションだというのである。

 ぼくは京都府の園部という田舎で育ったので、周りに蛙はたくさんいたが、夏の夜など、池や田んぼの畦道を歩いていると、ゲロゲロ鳴いていた蛙がポチャンポチャンと水に飛び込む音を聞いたように記憶しているのだが…。でも嵐山氏は、それは聞いたと錯覚しているだけで、「芭蕉の句が先入観として入っているためと思われる」と言うのである。「古池や」の句が写生でも創作でもどっちでもいいけど、蛙が飛び込むとき音がしない、というところに引っかかるなあ。周りに蛙がいっぱい棲息している田園的環境にお住みの皆さん、教えてください。あなたは蛙が飛び込む音を聞いたことはありませんか?